那須悠は、コンピュータ将棋における NNUE の提案者として広く知られる開発者・研究者である。2018年の第28回世界コンピュータ将棋選手権のアピール文書で、高速に差分計算可能なニューラルネットワーク型評価関数を提示し、その後の将棋AIとコンピュータチェスの流れを大きく変えた。

概要

従来の将棋AIでは、三駒関係 などの高速な手作り評価が主流だった。NNUE は、CPU 上で低レイテンシに動作し、1手ごとの差分更新を利用できる非線形 評価関数 として設計された。これにより、ミニマックス法 や alpha-beta 系探索と相性のよいニューラル評価が実用化された。

主な貢献

NNUE の提案

2018年のアピール文書では、clipped ReLU、整数 SIMD、差分計算を前提にした設計を示し、「三駒関係と同等の実行速度で動作する非線形評価関数」を目標に据えた。ここで提示された考え方は、後の やねうら王 系や Kristallweizen などの将棋ソフトに大きな影響を与えた。

やねうら王での実装と普及

やねうら王の更新履歴では、2018年5月15日に ynasu87 による NNUE 評価関数の追加、5月20日に NEON 向け最適化が記録されている。つまり、那須の提案は論文的なアイデアに留まらず、比較的短期間で実戦的な実装として共有基盤へ取り込まれた。

コンピュータチェスへの波及

Stockfish の公式ドキュメントは、NNUE を「将棋のために Yu Nasu が発明し、2018年5月に YaneuraOu に統合され、2019年6月に Hisayori Noda によって Stockfish 向けへ移植された」と説明している。Stockfish 公式ブログも、NNUE は将棋で先に導入され、その後 Stockfish に移植されたと述べている。したがって、那須の歴史的な役割は「Stockfish へ直接移植した人物」というより、「移植される価値のある評価関数の方式そのものを提案した人物」と見るのが適切である。

将棋AI史での位置づけ

NNUE の登場により、将棋AIでは GPU 前提の深いネットワークだけでなく、CPU 上で高速に動作するニューラル評価が現実的な選択肢になった。この影響は将棋に留まらず、Stockfish を通じてコンピュータチェス全体にも広がった。将棋AI史の中では、Bonanza 系評価の時代から NNUE 時代への転換点を作った人物の一人といえる。

関連項目

参考にしたホームページ